営業職のとき、社長さんから「座右の銘は」と聞かれたことがある
きっと「あんたみたいな若いもんは何も考えとらんだろう」くらいに思ってのことだろう
そんな感じがしたので、はっきり答えた
「大河の一滴です」
泥水でも、澄んだ水でも、私たちはただの一滴であり、それ以上でもそれ以下でもない
人はみな、大河の一滴である
日々いろんなことがあるけれど、「大河の一滴」と思えば、たいていのことは乗り越えられる
私だって死のうかしらと思ったことは何回もある
圧倒的に、子ども時代が多かった
そしてその理由は「貧困」から引き起こされた
ならば「貧困」から抜け出たらいい
簡単な方式だった
私は幸い、貧困から抜け出すすべを身に着け、収入を得て、今は納税者となった
貧困から抜け出し、「死のうかしら」と思ったことは1回だけだった
それは仕事のミスだった
私が書いた文章が、勝手に歪曲され、知らぬまま掲載されておおごとになった
かばってくれた人は誰もいないばかりか、訂正文も出さないと言われた
そう言った人たち、このことを覚えていないと思う
いじめと同じだ
したことはとうの昔に忘れてしまう
でも「死のう」と思ったことは忘れない
いじめられた人も忘れないだろう
忘れた人も、忘れない人も、みんなみんな、大河の一滴である
人生という大河を流れる、小さな存在である