子どものころ、今より米は不味くて
漬物だったり鰹節だったり、味噌だったり、とにかくごはんのともがないと食べられなかった
自家製米だったからかもしれない
貧しい生活で、分厚い肉など出てこない
野菜、野菜、野菜、薄っぺらい冷凍肉
ただ、父が魚が好きだったので、刺身はよく食卓にあがっていた
ムリをして買っていたのかもしれない
母はあまり料理が上手ではなかったと思っていた
天ぷら、肉じゃが、煮物、カレーが出てくる
大しておいしいと思わなかった
大学生になるとアルバイトに精を出し、家で食事をすることもなくなった
時を経て子どもができ、
実家に立ち寄ったりお世話になったりすることが増え
ふと気づく
母は精一杯私たち子どもを育て、精一杯食事の支度をし、
たまにもらうリンゴや缶詰など、一度として口にせず子どもに与え
余ったご飯を食べ、贅沢など一切しなかったと
子どもが成長し、母はいま悠々自適な年金生活
それでも贅沢はせず、孫のために何かすることを楽しみにしている
料理は格段においしくなった
年を重ねて料理がおいしくなるなんてすごい!!
今は金銭的余裕も、時間的余裕も、おそらく精神的余裕もあるのだろう
テレビで見たレシピをメモして、新しい創作料理にも挑戦している
ガスで煮る煮物は絶品だ
子どものころ、大根しか入っていない煮物がストーブの上で煮詰まっていたが
あの頃はそれが精一杯で
精一杯、精一杯の料理を、日々の暮らしの中で出してくれていたのだ
今も母は、もてる力精一杯で、孫のために料理を作って待っている
どこやらの5つ星の名店で食べるより
何倍もおいしい
この世で一番おいしい料理ではなかろうか
そして私はいつまで、この料理が食べられるのだろうか
私はそんな料理を、我が子につくることができるだろうか