まだ20代、最初に勤めた会社の(今は亡き)支店長は
身に着けるものは一流でないと、という人だった

初任給はよかったけれど、やはりお金が欲しい、足りないお年ごろ
仕事の延長でゴルフをしろとか、いい車に乗れとか言われても・・・

・・・が、言われたので、
海外旅行に行った先で、免税で時計を買った
中途半端なものを買ってもどうせ何か言うんだから
ROLEXを買った
一生大切にしようと思うくらい高かった(+_+)

その後、父の余命が宣言され、私は会社を辞めた
辞めたから電通に転職できた
転職できたことを伝えたのち、支店長も父も亡くなった
支店長はどう思ったか知らないが、父がとても喜んでくれていたのはあとから知った

そんなときも時計は腕にあった

結婚して子供ができて
冗談で「あげるわね」「お嫁さんにあげるわね」ということも増えた

どんなときも時計は腕にあった

時計をしないと、左手に重みがないので違和感があるくらい
時計は腕にあった

それなのに・・・
ここまでは絶対あった時計がない

さんざん探した

2週間探しても出てこない

一縷の望みをかけて、「ここまではあった」の次の場所へ電話をした
そこは警察の管轄の施設だった

「・・・類似するものが届いております」
「紛失届は出していますか」
口が重い

あなたのものだと証明しろという
高価なものだから簡単には渡せないということだ
申し出るまで時間がかかっているのもあったからだろう

購入したのは30年以上前だが、
投機の対象となるものだから、いまや軽く3倍はする
中古でも高値で取引されている
それに、箱も証明書もあったけれど
子どもに挙げるものと思ってすべて捨てていた

「あなたが身に着けている写真を持ってきてください」

そもそも、「これROLEXなんだけど!」と、時計の広告のごとく文字盤を見せて写真撮る人おるか???

「あります!」

そう言うしかないわな

さーーー、私は探した探した
半袖の自分、裾から見える時計・・・
バックルは映っているものもあるが、文字盤となるとなかなか・・・

ない

ない

あるわけない

・・・が、私はひらめいたのだった
着物を着ていたら、時計よく見えるわってことに

しかも、写真クラブのじーちゃんが私の写真撮ってくれてた
あれは確か時計が写っていた

わあああああ、ばっちりじゃん!!!!

私はじーちゃんがたまたま送ってくれた着物姿の写真を印刷して警察に持って行った

警察では、写真はともかく、バックルのサイズが私の手首にマッチしているかを見ていた感じだった

「どうぞ」

ぱらららららーーーーーーーーーーーーーーーーーん

約2週間ぶりに、私の腕にROLEXがかえってきましたー!
この重みよ!この輝きよ!

二度となくさないわ
(じーちゃんありがとう)