「ゆうべの食卓」角田光代
食卓かーーーー
母のカレー
母の漬物
母の煮もの
どれも絶品だった
貧しい生活の中で、精一杯の料理を出してくれたと思う
いざ人がくると出すものがなくて・・・
苦労したと思う
私が社会人になってすぐ
両親を居酒屋に連れていったとき
付き出しがタコワサで・・・
父がおいしいおいしいと言って食べて・・・
「普段食べないからおいしいのう」って・・・
居酒屋で噛みしめて食べるものじゃないだろうに
でも、そんな小鉢ですら食べずに
私たち子どもを育ててくれたのだ
私の学費を出してくれたのだ
もっともっとおいしいものをたくさん食べさせてあげたらよかった・・・
自分は贅沢一つせず、貧しいことをバカにされ、いじめられ
ロクな人生ではなかったであろう父の
子どもだけが誇りだったと思うので
私はいつまでも輝いていないといけないと思う
もう父はいないから
私はせめて母を大切にしようと思う
主人はかつて「お母さんを大切にしよう」と言ってくれた
そして
父が私を大切にしてくれたように
私も子どもを大切にして死んでいくだけだ
シンプルだ

